「ネット社会の歩き方:レッスンキット」 実践研究報告書
9.3 生徒のアンケート結果集計
(1)児童生徒へのアンケート集計
 実践授業を行ったあと、次の様なアンケート項目で児童・生徒から授業、教材ソフトウェアの感想を聞いた。
 平成14年1月30日までのアンケート集計結果をまとめた。
a.有効データ件数 1382件(但し、アンケート項目により、無回答がある)
b.アンケートに答えた児童生徒の校種
小学校130件(12.6%) 中学校775件(74.9%)
高等学校129件(12.5%) その他1件(0.1%)
 「図54 校種」

c.アンケートに答えた児童生徒の性別  
男697件(50.4%)  女685件(49.6%)
 「図55 性別」

d.アンケートに答えた授業で使用した教材ソフトウェアの種類  

296件 (21.4 %) ... 学習ユニット(一斉授業用−解説画面無し)
1076件 (77.9 %) ... 学習ユニット(個別学習用−解説画面有り) 
10件 (0.7 %) ... 電脳商店街
「図56 教材ソフトウェアの種類」

e.アンケートに答えた授業で使用した教材
  165件 (11.9 %) ... 「01 無料ダウンロードは慎重に」
  10件 (0.7%) ... 「02 Webサイトの情報を活用しよう」
  52件 (3.8 %) ... 「03 こんなWebサイトに気をつけて」
  54件 (3.9 %) ... 「04 大人向けの情報に注意」
  49件 (3.5 %) ... 「05 危険な情報に注意」
  72件 (5.2 %) ... 「06 ネットで悪口は要注意」
  35件 (2.5 %) ... 「07 ネットで悪口が罪になる」
  22件 (1.6 %) ... 「08 おもしろ半分では無責任」
  19件 (1.4%) ... 「09 確かな情報を発信しよう」
  12件 (0.9 %) ... 「10 住所や電話番号をおしえるのは慎重に」
  9件 (0.7%) ... 「11 個人情報は公開しない」
  4件 (0.3 %) ... 「12 個人情報は大切なデータ」
  14件 (1 %) ... 「13 他人の絵や文章のコピーは要注意」
  16件 (1.2 %) ... 「14 音楽データ交換サイトは要注意」
  54件 (3.9 %) ... 「15 コピーしてもいいの?」
  6件 (0.4 %) ... 「16 とばく行為は禁止」
  84件 (6.1 %) ... 「17 ネズミ講は禁止」
  96件 (6.9 %) ... 「18 マルチ商法に注意」
  59件 (4.3 %) ... 「19 チェーンメールはカット」
  37件 (2.7 %) ... 「20 スパムメールは無視」
  0件 (0.0 %) ... 「21 契約は慎重に」
  57件 (4.1 %) ... 「22 ネット上のあぶない出会い」
  3件 (0.2 %) ... 「23 携帯電話を賢く使おう」
  27件 (2 %) ...「24 チャットで個人情報は言わない」
  31件 (2.2 %) ... 「25 チャットの危険性」
  4件 (0.3 %) ... 「26 電子掲示板の賢い利用方法」
  21件 (1.5 %) ... 「27 コンピュータウイルスに注意」
  18件 (1.3 %) ...「28 他人になりすまして」
  83件 (6 %) ... 「29 クレジットカードの取扱いは慎重に」
  76件 (5.5 %) ... 「30 ネットショッピングの活用」
  7件 (0.5%) ... 「31 雲隠れに注意」
  97件 (7 %) ... 「32 個人輸入は慎重に」
  4件 (0.3%) ... 「33 発注ミスに注意」
  74件 (5.4 %) ... 「34 ネットオークションの賢い利用方法」
  9件 (0.7 %) ... 「35 電脳商店街」
f.何が問題かわかったか?  

844件 (61.6 %) ... よくわかった
490件 (35.8 %) ... わかった
40件 (2.9 %) ... わからなかった
「図57 問題の理解」

g.問題を以前から知っていたか?

619件 (45.3 %) ... 知っていた
671件 (49.1 %) ... 知らなかった
89件 (6.5 %) ... わからない
 「図58 問題を以前から知っていたか」

h.興味を持って学習できたか?

704件 (51.6 %) ... 興味深く学習できた
627件 (45.9 %) ... 普通
37件 (2.7 %) ... 興味を持てなかった
 「図59 興味」

i.内容がわかりやすかったか?

891件 (65.3 %) ... わかりやすかった
429件 (31.4 %) ... 普通
48件 (3.5 %) ... わかりにくかった
 「図60 わかりやすいか」

j.デザインが見やすかったか?

925件 (67.9 %) ... 見やすかった
419件 (30.8 %) ... 普通
18件 (1.3%) ... 見にくかった
 「図61見やすいか」

k.操作しやすかったか? 

888件 (66.6 %) ... しやすかった
410件 (30.8 %) ... 普通
43件 (3.2 %) ... 操作しにくかった
 「図62 操作性」

l.ストーリーが身近で役に立ったか?

738件(58.4%)...役に立った
479件(37.9%)...普通
47件(3.7%)...役に立たない
 「図63 役に立つか」

(2)主な意見・感想
○すごく勉強になるのと、楽しく勉強ができるのでまたやりたい。(小学生)
○絵は文がとてもわかりやすくて、チャットやインターネットの注意が分かりました。(小学生)
○いろいろなことが、くわしくわかるし、マンガせつめいで、とてもおもしろかった!もっと、もっとふやしてほしい!(小学生)
○とてもわかりやすかったので、なにが問題かわかりました。絵もとてもわかりやすかったです。(小学生)
○ストーリーやデザインが分かりやすく,興味を持って学習することができた。(小学生)
○私もパソコンを使う時に個人情報をもらしたり、コピーしたりしないように、気をつけているけど、今回の学習で、あらためて、ネット上の注意がわかってよかった。(小学生)
○ふだんふつうに使っているインターネットが危険でびっくりしました。私がよくやっていることが犯罪にもなっていておどろきました。次ぎからは気をつけたいです。(小学生)
○ストーリーがおもしろかったので興味深く学習できた。(小学生)
○ずいぶん意外なことがいけないことなんだと思った。ソフトのインストールはとくに意外だった。(小学生)
○わかりやすくて、おもしろかった。何がいけないのかが、よくわかった。3種類の絵があって、たのしかった。(小学生)
○絵の一つ一つにくふうしてあってすごくわかりやすかった。(小学生)
○もう一度個人で見てみたい。(中学生)
○ケイタイでもチェーンメールのがあってとても役に立った。これからは気をつける。(中学生)
○声が出たらいいのに。「17 ネズミ講は禁止」 (中学生)
○すごく説明がわかりやすかった。もっといろいろ見てみたい。 「19 チェーンメールはカット」「20 スパムメールは無視」(中学生)
○知らないことがいろいろわかった。「14 音楽データ交換サイトは要注意」「18 マルチ商法に注意」(中学生)
○携帯でもチェーンメールがあってとても役に立った。これからは気をつける。 (中学生)
○授業が楽しかった。 (中学生)
○もう一度個人で見てみたい。 (中学生)
○単純で、簡単すぎると思う。高校生用だったらもっと深くつっこんでもいいんじゃないかと思いました。小中学生だったらすごくいいと思う。「01 無料ダウンロードは慎重に」(高校生)
○もう少し、内容をまとめてもらいたかったけど結構わかりやすかった。「18 マルチ商法に注意」(高校生)
○今まで、そういう問題がある事は知っていたけど、その対処法とかはあまり知らなかったので、すごく勉強になりました。「01 無料ダウンロードは慎重に」(高校生)
○分りやすくてゲーム感覚で学ぶ事ができた。(高校生)
○ネットメディアの楽しさや、気楽さの中に隠れた落とし穴的なものが分かった。
(高校生)

9.4 まとめ
 実践授業結果から教育的先進性の観点で教材の有効性や課題などをまとめた。

a.興味・関心
 扱うテーマへ興味・関心、および気付きをおこさせるためアニメーション・ムービーを用いて、学習テーマを提示した。この方法はアンケート内容に「アニメで見やすかった」「アニメの絵がかわいかった」などの感想から分析すると、非常に効果があったことが認められる。そして、自分で操作をしながらムービー画面を次々と表示させることで授業への参加意識も高まることが実証できた。
 また、なるべく身の回りの問題事例を題材にしたストーリーであり、学習テーマへの興味が高まったようである。

b.教材の有効性
 教師からの意見・感想や生徒のアンケートから有効性については、高い評価を得た。
<一斉学習の場合>
 教師がプロジェクターに提示し、画面毎に説明や生徒への問いかけをしながら、進める方法では非常に効果がある。但し、教師の事前準備や経験が重要な要素となる。そこで、プレゼンテーション資料も活用して参考資料を提示したり、予めストーリーを確認することで事前の準備ができるようになった。
<グループ学習>
 数人のグループで学習ユニットや電脳商店街を見ながら、問題点を話し合ったり、他の教材やリンク集で調べ発表する形式は生徒達の判断の正しさをアニメーションで見せたり、調べた結果を発表することで知識の定着につながり効果があると判断できる。解説画面もあり、グループ内生徒間でインターネット利用経験の差がある事があり、お互いに教えあいながら学習もでき、より効果的に学習できた。
<個別学習>
 生徒一人一人のペースで学習ユニットを見て学習する場合は解説画面がある学習ユニットで説明内容を良く読み、わからない事はリンク集で調べるという事で,理解の深さや広さの違いはあっても一つの学習テーマを最後まで順を追って学習できるようになった。
 いづれの学習方式であっても、教材ソフトウェア毎に用意したワークシートに記入することで、学習効果の確認ができるので、ワークシートの利活用は有効であった。

c.教材の数と種類
 学習ユニットが34個となり、携帯電話や出会い系サイト、消費者契約問題、インターネットショッピング、インターネット・オークションなどのトラブルの増加にあわせて充実させた。 

d.教材の使いやすさ
 実践授業では使いやすさについて、特に課題は出なかった。 

e.ソフトウェアの機能
 BGMや効果音、ナレーションの追加の要望がこれまで何人かの教師から出たが、次ぎのような考えで要望に対処した。
 操作性の向上のため、学習の邪魔にならないであろうと判断し、ボタンクリック音を入れた。
 ボタンクリック操作が受けつけられたことを知らせるためには有効となった。
 音楽、ナレーションはファイルサイズが大きくなり、教材の普及を目指したダウンロードフリーという考えからは現状の通信速度では対応は無理と考えた。そして、ナレーションはアニメーション・ムービーの吹き出しの表示タイミングと同期を取る必要があり、校種による吹き出し文字の黙読スピードの違いもあり、かえって煩わしくなると考えて止めた。

f.課題
 「教材の数と種類」において、特に携帯電話の急激な普及でモラル、マナー、関連した問題事例などいくつかのテーマを一つの学習ユニットで扱ったが、それぞれのテーマを別々のユニットにして扱った方がより効果があると考える。
 また、同一学習ユニットを小中高生が利用することで、ストーリーや解説内容の焦点が絞りきれず、小学生にとっては難しい、高校生にとってはやさしすぎることがあった。これは制作段階でも推察できたことであり、難しい解説はなるべく最初に小学生用に簡単な説明を入れたが、解説の後半では難しくなった。扱うテーマにより、かえって簡単な説明は誤解も招くこともあり、やむおえないことであった。そのためには用語事典的な機能も必要であると考える。そして、高校生用には高度な内容で別途制作した方が良いテーマもある。例えば、著作権やネットショッピング、携帯電話、契約、コンピュータウイルスなど。 
 教材のダウンロードが自由であり、使いやすさを考慮してソフトウェア毎、カリキュラム毎に1ファイルにすることを考えたが、1ファイル30MB以上になるケースがあり、現状のインフラでは複数ファイルに分けざるをえず、使いやすさは犠牲になってしまった。

9.5 考察
 約50%の児童生徒がインターネットに関する問題そのものを知らなかったこと、60%以上の児童生徒が問題点や内容を理解したことが判明した。ネット社会特有の問題を理解させるために一方的に情報や知識を提示し、生徒に理解させるのではなく、先ずアニメーションムービーで児童生徒に問題点を気付かせ、興味関心を覚えさせる。そして途中でアニメーションムービーが終わることで、この後どうなるのか、どこかに問題があるのか、どうしたら良いのか、教師が生徒の考えをひきだすことができる。このことで授業が活発になり、生徒も積極的に学習を進めることができ、学習目標の達成に有効な教材であると考える。
 また、教室での授業のあと、放課後・家庭での学習を想定して問題点だけでなく、どこに問題があったのか、どうすれば良かったのか、問題点の対処方法を解説するムービーもそれぞれの学習テーマ毎に用意したので、積極的に学習する生徒にはとても有効であると考える。
 
 ネット社会が拡張する今日、「ネット社会の利便性と危険性」とともに、ネット社会を生きていく上で身に付けたいモラルやマナーを取り扱う数少ない学習材の一つとして、このレッスンキットの有効性がユーザーによって評価されたと考えられる。今後、多くの学校や家庭で活用されるだろう。その学習成果がこれからのネット社会を向上させていく原動力になると期待している。

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