「ネット社会の歩き方」を活用した情報モラル育成の授業実践
題材名 「きみのWebページ、公開して大丈夫?」
〜Webページ発信に関する情報モラル〜
実践者 千葉県柏市立旭東小学校 佐和伸明 校種 小学校 学年 第6学年 教科 総合的な学習の時間(情報リテラシー) |
子どもたちが学校でインターネットを活用する姿は日常的になり、本校の高学年はホームページの制作や電子メールでの発信の技能など、自ら情報発信をするための技能も十分に身につけている。また、家庭でも急速に情報化が進む一方、情報モラルやセキュリティーに関する指導をどのように進めたらいいのか分からない家庭がほとんどの現状である。そこで、各自のホームページの公開を予定している6年生の子どもたちに情報発信する際に必要な知識と、情報社会において適切な活動を行うための元となる判断力を身につけさせることをねらいとして本単元を行った。また、Webページを公開する時に注意しなればいけないことを理解させるための資料として、「ネット社会の歩き方」の学習ユニットを活用した。 |
一人一人テーマを決めて、写真やデジカメ画像などのデータを集めた。また、模造紙に作品の全体像を書いてディレクトリやファイル名を整理した。 |
ホームページ作成ソフトを使ってまとめる活動を行った。スキャナーやデジカメなどの周辺機器も有効に活用した。 |
@「ネット社会の歩き方」を見て、Webページを公開する時に注意しなればいけないことを考える。
・個人情報の保護
・誹謗中傷
・責任ある発信
・知的所有権の保護
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A 気づいたことや分かったことを話し合う。 ・個人の考え
↓
・グループごと
↓
・全体で話し合い へと広げていった。
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B 自分たちが作っているホームページを見直す。
<見つけたもの>
・友だちや先生の写真
・スポーツ選手や芸能人の写真 ・アニメのキャラクター ・電車の写真 ・書籍やホームページからの引用 など |
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C問題がないか話し合う。 <中心となった話し合い> 「Hくんの電車の写真って、公開しても大丈夫なの?」 「自分で撮ったものだから問題ないよ。」 「でも、電車を所有している人の権利もあるはずだよ。」 「電車は公共物みたいなものだから、いいんじゃないの。」 等、学級を二分しての激しい討論となった。 |
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D 問題を解決する手段を考え実行する。 Cの話し合いで、 「では、どうしたら決着がつくと思う?」 という教師の問いかけに、 「電話をかけて、聞いてみればいい!」 という答えが返ってきた。 そこで早速、ホームページで鉄道会社の電話番号を探し出し、コンピュータ室から携帯電話を使って問い合わせてみることになった。電話をかけるのは、もちろん電車の写真をホームページに掲載しようとしている子どもである。緊張した声で事情を説明して、質問をしてみると、鉄道会社からの回答は、 「許可なく、ホームページで公開することはできません。」 とのことであった。 しかし、きちんと鉄道会社に申請をし、手続きをすれば許可をもらえるということが分かった。 電車の写真の他にも、友だちや先生の写真、アニメのキャラクターやスポーツ選手の画像、書籍やホームページからの引用などについての問題を指摘された子どもたちは、電話をかけたり、メールを出したりして、何とか許可をもらおうといろいろな手段で交渉をはじめた。なかには許可をもらえないもの(アニメのキャラクターなど)もあったが、そのことは却って子どもたちに知的所有権の存在を実感させる結果となったようである。 |
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学習を終えた子どもたちの感想 ・今日は、実際に○○鉄道に電話をしたので、緊張しました。他の人のホームページにも電車の写真は公開されているので、問題があるなんて全然思っていませんでした。電話をかけて、説明したら、「写真をのせることはできません!」と言われて、まっ青になりました。ぼくのページはどうなってしまうのかと思いました。でも、きちんとお願いすれば許可がもらえることが分かって、よかったです。 ・自分の顔をのせようと思っていたげと、どうしようか迷っています。いたずらとかされたら、いやだなぁと思うからです。でも、住所とか電話番号がなければ、平気かな?家の人とも相談してみようと思います。 ・友達と一緒にとった低学年の頃の写真をのせようと思っていました。でも、その友達は引っ越してしまったので、まだ許可をもらっていません。電話か手紙で聞いてみたいと思います。 ・アニメのキャラを使いたかったので、メールを出したら「できません!」という返事が届きました。ショック!!でも、きちんと説明があって、そのキャラを大切にしていることが分かりました。しかたないかも・・・ |
<成果> ・「ネット社会の歩き方」の学習ユニットは具体的な事例で分かりやすく説明されているので、子どもたちは、情報発信を行うときの注意や問題点についての理解を深めることができた。そのため、自らの問題点についても発見することができるようになった。 ・本実践においては、ホームページの公開を目前にしている子どもたちに、情報発信に関する問題点について考えさせたことにより、情報モラルの問題を『自分の問題』として捉えさせることができたと思う。 ・文字入力やソフトの使い方などの技能面を高めるだけでなく、情報社会において、適切な活動を行うための元となる判断力と正しい態度についても、子どもたちに考えさせる場を設定することができた。 ・各自のWebページの作成を通して、「調べて」「まとめて」「伝える」という情報活用の実践力を育てることができた。 <課題> ・情報モラルについては今後ますます重要になってくると思う。本校においても、「ネット社会の歩き方」の有効な活用方法を工夫して各学年の「情報モラル年間指導計画」についての見直しを図っていきたい。 ・現代社会においては、子どもたちが被害者や加害者になってしまう新たなケースが発生しているので、必要に応じて適宜指導をしてい必要があると思う。 |