授業におけるIT活用法
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 特別支援教育上の配慮
1 障害のある児童生徒におけるIT活用の基本的視点

(1)  障害のある児童生徒におけるIT活用とその意義
 学校におけるIT活用は,児童生徒の学習を効果的にするだけでなく,今後の情報社会におけるリテラシーを学ぶ上でも重要です。これは,障害のある児童生徒にとっても例外ではありません。ITを活用することは,障害のある児童生徒が障害のない児童生徒と同じように学習したり,自立し社会参加できるようにしたりするための手段として有効な場合があります。この場合,障害のない児童生徒以上にその必要性が高い場合もあります。例えば,運動障害があり鉛筆を握ることが苦手な児童生徒にとって,ワープロソフトの活用は書字を代替する手段として,図形処理ソフトは描画の代替手段として有効です。また,弱視の場合は,教材を拡大したり,配色を変更することで教材が見やすくなります。さらに,文章を音声で読み上げてくれるソフトウェアは,視覚障害や知的障害のある児童生徒にとって有効な手段となります。そのほか,例えば病弱教育において,クリーンルームなどに隔離されている状態にあるときに,病弱養護学校での授業を受けたり,前籍校との交流など,様々な活用が考えられます。

(2)  障害の状態に応じたITの利用の仕方
 障害が重度である場合,ITは活用できないとの思い込みがあります。実際に重度の知的障害がある児童生徒の場合,コンピュータを十分に活用することが困難なことがあります。しかし,だからといってコンピュータの機能が全く利用できないわけではなく,因果関係の理解を学ぶなど,場合によってはコンピュータを利用することで効果的な学習になることもあります。コンピュータを利用できなくてもPDAや携帯電話などの機器を通学や外出時のコミュニケーション手段として活用している児童生徒もおり,障害の状態に応じたITを利用することが必要です。

(3)  支援者の必要性
 支援技術(AT:Assistive Technology)を利用してITを活用したくても,その設定などのサポートをしてくれる人が存在しないと機器を利用することは困難です。また,IT機器を利用することが障害に基づく種々の困難の改善・克服への意欲の向上の妨げになるのではないか,と危惧し,その利用を控える人も少なくありません。この点について,車椅子やコミュニケーションエイドなどATの利用はその意欲の向上の妨げとならず,逆に,移動やコミュニケーションの楽しさを知ることでその意欲を高めるという報告が多くなされています。こうしたことから,障害のある人が機器を十分に活用できるようになるためには,ITの有効性を十分に理解した支援者が必要となります。
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