3 障害のある児童生徒のIT活用の効果と課題
障害のある児童生徒のIT活用は,彼らの能動的学習活動を実現するという点で大きな意義があります。これまで受動的に学習せざるをえなかった児童生徒が,部分的にでも能動的に活動できることは,彼らの精神面での自立を促します。このことは,障害のある児童生徒が通常の学級で学ぶ場合,大きな影響を及ぼします。障害のある児童生徒で能動的な活動が困難な場合,ほかの児童生徒の支援を受けながら学習をすることが多くなりますが,ATやITを活用することにより,学級集団において,役割を創出し,それによって集団へ参加することが可能になります。米国においては,通常の学校で障害のある子どもが学習する場合にATやITを活用することが不可欠と考えられるようになってきています。
一方,課題も数多くあります。現状では,ATに関する知識をもった教員の数は多くなく,そのため,学校において障害のある児童生徒のIT活用が十分に促進されてはいません。特別支援教育においてもATやIT利用のニーズは高まっていますので,ATに関する研修を特別支援教育担当者に求めていく必要があります。また,障害のある児童生徒が利用できる教育用コンテンツの少なさも課題です。少ないコンテンツを増やすためには,小・中・高等学校段階の教育用に開発された教材のアクセシビリティを確保し,それを活用することは一つの方法です。また,障害のある児童生徒用に開発された既存のコンテンツが,多くの教員に届くシステムができあがっていないのが現状であり,ネットワークを利用していかに多くの教員がコンテンツを共有できるかも課題です。
ATとITを利用することにより,多くの障害のある児童生徒の学習効果を高めることができます。それぞれの障害に応じて,最も適切な技術を提供していくことが必要です。
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