IT授業”実践ナビ 〜授業でITを使ってみませんか〜
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IT授業を実践している先生にインタビュー
熊本大学教育学部附属小学校教諭・宮脇 真一 事例へ
聞き手:独立行政法人メディア教育開発センター研究開発部 調査・国際系助教授 堀田 龍也
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授業の見せ場!
デジタルコンテンツの活用
Web上には、このようなコンテンツがたくさんあります。特別なスキルがなくても簡単に使えるものばかりです。また、授業の中で使うのは、ポイントとなるわずかな時間です。普通教室で、まずは気軽に使ってみるといいと思います。
1.授業の内容とIT活用の効果
堀田: “IT授業”実践ナビに掲載された授業について教えていただけますか。
宮脇: 小学校3年生の算数の「見やすくせいりしよう」という単元で、グラフとか表にする前段階の、正の字を使っていろんな資料を整理する授業です。
堀田: データの整理の仕方の入り口として、大人になってもよく使うやり方ですね。そこでどういうふうにコンテンツを使おうと考えたのですか。
宮脇: 正の字を書くやり方は子どもたちも知っていますが、実際使うとなると難しい。そこで今回は動きのあるものを使って、自分なりの方法で整理の仕方を考える、そういう使い方をしています。
堀田: コンテンツを使わない授業のときは、この場面を教えるときにはどうしていたのですか。
宮脇: 私の場合は、カードをたくさん用意して、これを整理しなくちゃいけなんだけどどうしたらいいかな、という投げかけをします。ただその場合難しいのは、こちらの準備が凄く大変なことと、1人に何十枚もカードを用意するわけにはいきませんのでグループで行わなければならないことです。
堀田: そうするとグループの中で気が利いている子がいると、ぱっとやってしまい、手を出せない子が出てくるということですね。
   
堀田: 今回はコンテンツを使ってそれを改善したわけですが、使い方をもう少し詳しく教えてください。
宮脇: 最初は何も言わずに、乗り物が通り過ぎる映像を見せます。そうすると子どもたちはワイワイ楽しんで見るんですが、一通り通ったところで、どんな車が走っていたのかを聞きます。そうすると車種は出てくる。じゃあ何台走っていたの、と聞くと、えーっと驚くんです。
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堀田: 動きが早いから分からないんですね。もう一回見たら分かるのでしょうか。
宮脇: これはスピードを変えられますので、わざと子どもたちが数えられないようなスピードにするのがコツなんです。
堀田: そうすると数えられないから、子どもたちは工夫をはじめるわけですね。
宮脇: 2度目に見せると、まず車とかバスとか車種を書きはじめます。そして最初の段階では、例えばバスの横にはバス、バス、バス…と書こうとするんですが間に合わない。するとバ、バ、バとなったんですが、それでも間に合わない。で、チェックとか丸になっていきました。
堀田: その後に話し合わせていましたね。それはどういう効果があるんですか。
宮脇: まず台数に関してはめちゃくちゃなんですね。でも結果を見せたときに近い数字の子に、どうやったのと聞きます。そうすると、ぼくは「バス」と書くのではなく「バ」とした。そうしたらほかの子がぼくは「バ」と書く時間があるならば「丸」をつけた方が早い。ぼくは「棒」を引いた方が早いと、スピードに対応するためのいろんな意見が出てきます。
堀田: 話し合った結果、正の字を書くやり方が出てくるのですか。
宮脇: 出るのですが、意外なことに、それは子どもたちには受け入れられないんですね。自分のやり方にこだわるんです。
堀田: 最終的には1台も漏れなく数えられるというのが目標なんですよね。
▲堀田先生 ▲宮脇先生
宮脇: そうですね。正の字を使うやり方は教科書にも載っていますので、なんでこれがいいのかということを、数え方を工夫することで考えさせるわけです。
堀田: 子どもたちがよく知っている、しかし何で必要なのかが分からなかった知識が、こういう場面を通して工夫した結果、必要性が認識されて正しいやり方に導かれるということですね。このコンテンツを使って、どこがいちばん変わりましたか。
宮脇: コンテンツだと自分対画面、自分対友達の関係になりますから、まず自分なりの方法で考えることができる。そして数えたり書いたり、それぞれのやり方を出し合うということで、より体験的に学べますし、そこに意義があると思います。
堀田: 必要性が分かることで、得た知識が今後いろんなふうに使えるようになるでしょうね。最初から知識を持っていても適応する場面がないとただ覚えているだけですから。ほかにもITを使った授業はされているのですか。
   
宮脇: 算数が中心なんですが、社会、国語、図画工作、総合学習でも使っています。いずれもweb上にあるコンテンツを使うとことが一番多いですね。4年くらい前から算数で使い始めたんですが、現在は数も増えていますし、使いやすくなっています。
2.IT活用のコツ
堀田: 今回のコンテンツもweb上にあるコンテンツなので、見つけさえすれば誰でも使えるということですね。それを使うコツというのはどんなところにありますか。
宮脇: 私の場合は45分の授業の中で使うのは5分くらいです。一人ひとりがコンピュータに向かって操作することもありません。
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堀田: そうするとコンピュータ室ではなく、多くは教室でプロジェクターに映して使うというスタイルですか。
宮脇: そうですね、一斉授業の良さをそのまま生かす感じですね。
堀田: 今まで失敗したことは。
宮脇: 当初はコンピュータをずっと使わなければと思いこんでいました。例えば15÷3というわり算の授業で、画面にリンゴが15個ある。これを3つに分ける、さあどうすると聞くんですけれど、失敗はこれをずっと見せてしまったことなんです。
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堀田: ずっと見せるとすぐに分かってしまうというとこですか。
宮脇: 15個リンゴがあるというのが分かってしまうと、計算の仕方を分かっている子どもは機械的にやってしまって結果だけがポンと出てしまう。ここで大事にしたい分け方、分ける意味といった問題を解決する方向には行かないんです。
   
堀田: その失敗を改善するためにどうされたのですか。コンテンツを作り直すとか。
宮脇: いえ、コンテンツはそのままで、先ほどの車と似ているんですけれども見せる時間を短くしました。そして何個あったかと。そうすると、子どもたちは一生懸命見るんですね。また15個というのが微妙な数で、12個ぐらいまではすぐに数えられる。それで12よりも多そうだから3つに分けて、後で調整しようとかいった工夫が生まれてきます。完全なものを見せると、それで終わってしまいますが、情報を制限した方が学ぶ意欲につながりましたね。
堀田: 最初は何個か分からないくらいの方が、分け方の工夫が議論になるということですね。コンテンツを工夫して、解決しなければならないんだけど、ちょっとすぐには分からないぞという状況を作る、つまりは授業作りというですね。
宮脇: いいコンテンツというだけでははなく、授業をする側の考え方がしっかりしていることが大切だと思います。
3.先生方へのアドバイス
堀田: “IT授業”実践ナビをご覧になった先生からは、反響はありましたか。
宮脇: 質問が多く寄せられました。一番多かったのは、どういうタイミングで使っているのか、流しっぱなしにしているのか、ワークシートを使っているのかといった映像に出ていない部分に対するものです。
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堀田: つまり通常の授業のマネージメントとはどう変えているのかという質問ですね。実際に先生は変えているのですか。
宮脇: 基本的には変えていません。黒板に文字を書くのと同じ感覚で映像を映すだけですから。簡単な答えなので拍子抜けされてしまうんですが。
堀田: そのぐらいの気軽な活用で、けれどポイントは押さえるということでいい授業になるということですね。
宮脇: 私自身コンピュータを使うスキルが高くないので、上手に使えない私でもこの程度の授業ならできるんですよ。
堀田: それは、これからIT活用を始める先生には心強いお話ですね。
   
宮脇: メールやインターネットができればそれで十分だと思います。大事なのはどんな授業がしたいのかということですね。
堀田: しかも宮脇先生のように失敗を重ねても、だんだんコツが分かればいいということですね。本日はどうもありがとうございました。
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