IT授業”実践ナビ 〜授業でITを使ってみませんか〜
English TOP トピック クレジット リンク集 ヘルプ

IT授業を実践している先生にインタビュー
千葉県立茂原高等学校教諭・永野 直  
聞き手:東京工業大学教授 工学博士・赤堀 侃司 事例へ
クリックするとインタビュー動画が見られます。
 
ビデオ300k ビデオ150k
 
授業の見せ場!
フリーソフトウェアの活用
立体ソフト「Teddy」は、マウスだけで簡単に立体が作れる無料のソフトです。これを使うことで理解度がぐんと高まりました。地形だけでなく、アイデア次第でさまざまな使い道があると思います。インターネットのフリーソフトの中には授業の楽しさ、可能性が広がるものがたくさんあると思いますので、どんどん活用してみるといいと思います。
1.IT活用方法
赤堀: 先生の地理の実践なんですが、拝見してびっくりしました。ソフトにも驚いたし、使い方も優れている。このソフトはどうやって入手されたのですか。
永野: 千葉県総合教育センターで「IT機器を利用した分かる授業の実践」という研究を行っています。そこでは「新しいソフトを使って実際に授業に活用していこう」ということで、いろいろな先進的なソフトを紹介しているのですが、この「Teddy」もその中のひとつです。(入手したあと)私も最初は非常に驚きました。
赤堀: これは東京大学の五十嵐先生が作られたソフトですよね。はじめから地形に使おうと考えていたんですか。
永野: 五十嵐先生は立体のCGをマウスだけで書くというインタフェースの研究をされていている方です。これだけ面白くてインパクトのあるものなら何かしら使えるに違いないと思ったんですが、最初はそれがどういうふうに使えるのかといった具体的なアイデアはなく、何に使うかはっきりしないままずっと触っていたんです。そうしたら、立体は地形に使えるんじゃないかなというアイデアができて、実際に地形を作ってみたところ、意外と分かりやすい。だんだん使っていくうちに思いついたという感じですね。
ビデオ300k
ビデオ150k
赤堀: ちょっと実演していただけますか。
永野: 非常に簡単に立体ができるんですね。
ビデオ300k
ビデオ150k
▲立体をつくっているシーン
赤堀: これは手書きでできるところがアナログっぽいですね。五十嵐先生とはコンタクトされたのでしょうか。
永野: この研究を行ったときにアドバイザーとして来ていただきました。基本的には公開されているものですが、唯一、等高線を書きやすくする機能を付け加えていただきました。
赤堀: これだと、ひとつの山で左右勾配が違う絵があって、それが等高線になったときの密な状態と疎の状態の違いが見事に出ていますよね。
永野: 最初に等高線のない状態の山をぐるぐる見せて勾配の差を理解させておいて、それに等高線を書いた場合ににどうなるのか、それが密になったり広くなったりすることで勾配の違いが生徒にも直感的に分かって、すぐに納得してくれます。
赤堀: 授業はどのように進めたんですか。
永野: 実はこのソフトでは、最初は地形の勉強をするとはいわずに動物のキャラクターを書いて見せたんですね。すると、生徒も私が最初に見たときと同じように驚いていました。そこで、このソフトで何ができるかを生徒に考えさせたんです。地形に使うといわなかったのは、使い方を例示してしまうとイメージを固定してしまうと思ったからです。すると、例えば美術の立体のデッサン、医学での器官の説明、建築物ではどうだろう…といったいろんなアイデアを出してくれました。
3.IT活用の効果
赤堀: 実際に授業で使ってみて、生徒の反応、効果などはいかがでしたか。
永野: 興味や関心だけではなく、実際の理解力とか地形の認識について明らかな効果がありました。例えば海溝を断面図で見せると、それを海溝だと答えることはできるんですが、実は「穴」だと思っていた生徒もいました。しかし、これを使うと溝だということが分かる。生徒には何で最初からこれを使わないのかといわれたほどです。ただ、最初からこれを使ってしまうとあまりにも直感的すぎて、思考や想像につながらないと考えたので、そういった部分も省略せずに、最初は写真や板書を使った授業もやって、最後のまとめという使い方ですね。
ビデオ300k
ビデオ150k
赤堀: ただ覚えるだけではなく、印象的な授業になったということですね。書いたものが立体になってみられるというのは非常に興味深いですからね。生徒にも使わせるんですか。
永野: 使いたいという生徒には触らせますが、私は生徒に使わせることはさほどメリットがないと考えています。というのも、操作だけが印象に残っても困りますから。
赤堀: 先ほどの生徒たちのアイデアもありましたけれども、このソフトはいろいろ応用できる可能性がありそうですね。ところで、先生のIT活用の背景について教えてください。
3.IT活用の背景
永野: もともとコンピュータに特別詳しいというわけではなかったのですが、好きというか興味はありまして、これは授業で使わない手はないと5年ほど前から使い始めました。それからは毎年テーマを変えて、ほかの教科の先生方と協力しながら使ってきました。最初はデジタルポートフォリオの研究で、これは国語の新聞購読という授業で、毎時間生徒が記事を書きためたり写真を撮っていたものをデータベース化して、最後の紙面作りで再構成する際にデータベースから記事を引っ張ってきて作るという使い方をしました。
赤堀: それはかなり大変な作業だったでしょう。それは学力などには反映されましたか。
▲赤堀先生 ▲永野先生
永野: ここでは生徒には自己評価もさせましたので、先週はこういう反省があったから今週はこうしようといった目標がはっきりしました。ただ編集しやすくはなったのですけれども、実際の国語の理解度には直接関係しなかったので、この翌年からは生徒の学力や理解度に直接働きかけるような研究を進めていきました。
4.先生方へのアドバイス
赤堀: ごく普通の先生がもっと楽に使いたいという場合、そのような実践やヒントになるようなことはありますか。
永野: さきほどの「Teddy」は無料のフリーソフトで、インターネットにつながっていれば使えますしインストールも必要ありません。そういうソフトはたくさんあると思います。ソフトだけでなく、ほかにもいろんなコンテンツがあるので、それを短時間見せるだけでも効果的な授業は可能だと思います。
ビデオ300k
ビデオ150k
※東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 講師 五十嵐健夫先生 「Teddy」
http://www-ui.is.s.u-tokyo.ac.jp/~takeo/index-j.html
ITを使わなければならないという義務感というよりも、こんなに面白いことができると感じることが大切ではないでしょうか。
赤堀: それと手軽に使えるということもポイントでしょうね。先生の学校のIT環境は。
永野: 各教室にパソコンが1台、それと校内LANが引かれています。あとはプロジェクターが校内で5台です。確かに普通教室で使えることもポイントですね。
赤堀: 先生のように自分が面白いと感じると、それが生徒にも伝わって効果的な活用につながるのでしょうね。本日はありがとうございました。
Copyright : 2003-2009 Ministry of Education,Culture,Sports,Science and Technology