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<コラム>「2010年の教室物語」

2010年5月X日○×小学校4年生クラスの一日

朝、少し寝坊したタクト君は、大急ぎで朝食をかき込み、お母さんにせかされながらランドセルをしょって飛び出した。学校までの道のりを小走りで駆けていく。今日はとても天気がよく、ほほをすり抜ける風が気持ちいい。竹藪のそばを通りかかったとき、昨日見つけたタケノコが、なんと自分の背丈よりも大きくなっているのに気がついた。
「へー。一日しか経ってないのに、こんなに背が伸びてる!」
タクト君はびっくりして立ち止まり、横に立って、背比べをしてみた。
「やっぱり負けてる・・・」
ちょっぴり悔しい思いもしたが、そうそうと、デジカメでぱちり、一緒に写真を撮っておいた。昨日は出始めたところの写真を撮って、デジカメブログ日記に書いてある。今日の写真はタケノコとツーショット。ばっちりスマイルで決めておいた。
そんなことをしていたので、学校についたのは、朝の会が始まる直前。先生はもう教室に来ていた。
「滑り込みセーフ。」
大急ぎでかばんをロッカーにしまうと、机に座った。
「では、朝の会を始めますよ」
先生はみんなの顔を見渡しながら、手に持ったタブレットPCの画面をタッチした。
「ユリカちゃんは風邪引いちゃったみたいでお休みだね。」
タブレットPCの画面には、職員室に入った欠席のメールが自動的にシステムに反映され、出席簿ができあがっている。欠席の状況に加え、子どもたちの顔を見ながら、体調不良の子どもがいないかチェックする。
「みんな元気ですね」
出席の状況は校務情報システムで管理され、学期毎の通知票に自動的にまとめられる。もちろん先生のタブレットPCでも簡単に確認や修正ができるようになっている。
「さて、今日の朝のスピーチは、タクト君の番だね」
先生に突然指名され、タクト君はびっくり。今日の順番をすっかり忘れていた。あわてて何を話そうかちょっと迷ったけど、そうそう、今朝のタケノコとのツーショット写真を思い出した。
「はい。えーっと、今朝学校に来る途中で、タケノコがすごく大きくなっているのを見つけました。これがその写真です。」
デジカメの写真をプロジェクタに映し出した。
「わー!」
みんなの歓声があがる。タクト君はちょっと得意げに話し続けた。
「昨日の朝は、土からすこし顔を出しているだけだったんだけど、今朝見たら、こんなに大きくなっていました。昨日の写真は、僕のブログ日記にあります。これと比べてみてください。」
先生は、タクト君のブログ日記にアクセスして、プロジェクタの画面を切り替えた。
「へー。一日でそんなに大きくなるんだ。竹って不思議。タクト君、一日で、背、抜かされてるじゃん」
みんなにいろいろはやし立てられ、すこし照れながら、でも少し得意そう。
「こうやって比べてとるとよくわかるね。同じものを続けてとっていっても、どう変わっていくかがよくわかるね。竹の伸びる速さはどのぐらいなのかしら。いろんな種類の竹も調べてみたいわね。ネットにも何か載っているかも。」
先生がちょっぴりアドバイス。この朝のデジカメスピーチは1年生の時から続けているので、みんなもう慣れたもの。最初は何をとっているのかわからない写真もいっぱいあったけど、今ではみんな上手に撮れるようになっている。写真が1枚あるだけで、たくさんのことが話せるようになった。

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