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5.3.2 2010年までに急ぎ取り組まなければならないこと
(1)学校長のリーダーシップを促す企画・運営、その徹底を促す研修の企画・運営
英国の先進的な事例に明らかなように、教室のICT環境を有効に活用しながら授業を進めていくためには、校長をはじめとする管理職のICT活用に関する理解とアクションが極めて重要である。リーダーシップが発揮されている学校では、教員全員がICT機器の積極的な活用を図りながら、授業改革を進めている事が多い。逆に一人や数人の教員にICT活用の責任を負わせている学校では、取り組みが停滞している。
今後は、学校長のICT活用に関する理解を高めるための取組を強化し、校長研修プログラム等において、こうした内容を一層重視すべきである。
(2)教員研修プログラムの改革
アンケート調査の結果から、全般に、学校におけるICT活用が、期待されるほどには進展していないという実態が明らかになった。その原因の1つに、わが国の教員にICT活用のイメージ等が乏しいことが考えられる。これを充実させるためには、教員研修プログラムの改革が望まれる。
具体的には、校長のリーダーシップの下、ICTを活用した授業の設計・実施・評価に関する校内研修を計画・実施していく必要がある。例えば、あるテーマに基づいて複数の授業を実践し、その効果を比較・検討する、仮想的な授業を想定してその問題点を探るワークショップを行うなど、より実践的なスタイルの研修が実施される必要がある。
(3)情報担当者の養成に資するe-Learningプログラムの開発
ICT活用の普及に向けた校内研修を企画・運営する役割を担うのは、校内の情報担当者である。それゆえ、その力量形成の仕組みが整えられることが望まれる。具体的には、そのための大学院レベルのプログラム開発が期待される。
英国北アイルランドでは、地域教員研修センター(Regional Training Unit)と大学が連携し、遠隔と集合をブレンドするスタイルの研修を実施し、修了者に対して、大学院の単位の取得が可能となるシステムを構築している。このシステムでは、知識理解をe-Learningによって図り、週に1度の夕方からの集合研修では、グループディスカッションやチームプロジェクトによって、ICTの活用、その普及に役立つリーダーシップ、マネージメントについて学ぶことができる。
また、米国ケンタッキー州では、教員は採用後10年の間に、大学院において、リーダーシップ、マネージメント、そしてICT活用を含む新しい教育方法に関する単位を修得して、修士号を取得することが義務づけられている。この場合、遠隔と集合のブレンド型のカリキュラムが採用されており、教員の通学は、夕方や土日のスクーリングに限定されている。
なお、英国、米国の事例とも、これらのプログラムを受講するための授業料は、該当者が個人で負担している。
(4)教育委員会等における教育CIO等の組織化
ICT環境の整備やICT活用の普及・促進には、教育委員会等における情報担当者の組織化が不可欠である。米国に習うならば、各自治体において、教育CIO及び教育CIO補佐官が設置されるべきである。
わが国においては、教育長または教育次長が教育CIOとなったり、当該自治体の自治体CIOが、教育CIOを兼務したりすることが考えられる。また、教育CIO補佐官については、情報担当指導主事が教育CIO補佐官の役割を担う場合が多いと思われるが、首長部局の情報担当が指導主事と共に教育CIO補佐官になるケースも考えられる。また、教育委員会や自治体内部に適任者がいない場合は、地元のIT企業の専門家など外部の人材を非常勤等で雇用することも考えられる。
こうした多様性を認めつつ、予算執行等の権限を有した教育CIO等をきちんと組織化している教育委員会が、少なくとも半数を数える状況に至るべきである。
(5)教員養成カリキュラムの基準の充実
アンケート調査の結果から、特に普通教室におけるICT活用が、期待されるほどには進展していないという実態が明らかになった。その原因の1つに、わが国の教員にそのイメージ等が乏しいことが考えられる。
これを充実させるためには、これまで述べてきたような方策の推進に加えて、教員養成カリキュラムの枠組みを再考することも考えられる。というのも、現在の教員免許法で規定されている科目には、ICT活用に関する内容はほとんど入っていないからである。唯一、教職に関する科目の「教育方法・技術」がこれに相当するが、その内容が十分に整備されているとは言い難い面もある。特に、各教科の指導に沿ったICT活用については、各教科教育法の科目内容にこれを必ず含めることを規定することが望ましい。