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4.2.2  調査結果のポイント

4.2.2.2  ICTサポート体制とICT活用支援のための人材

英国では、教育委員会や校長の権限が大変に強い。学校長は予算から人事までをマネージメントし、Ofsted(教育基準局)による共通の査察基準による評価を受けることなどを背景に、学校長は学校の経営者としての明確なビジョンを持つ。そのビジョンはICTの整備などにも明確に現れる。

ICTに対する戦略は、国家的なものであり、各学校に配分された予算に対して、一定の割合でICT関連に支出することが義務付けられている。また、それに加えて別の予算からICTに振り向けることも学校長の裁量である。さらに保護者や地域の企業などからの寄付やバザーによる基金などが追加されることもある。

教育基準局による評価次第で、次年度以降の予算の増減も左右されるため、比較的短期間に環境の整備が進み、標準化された評価基準によって成果を確認している。ただし、一通りの整備が行き渡ったということからか、ICTに対する予算は年々若干減少する方向にある。

ハードウェア的な面では、訪問した学校は、いずれの学校でも普通教室や特別教室、体育館にまで天吊のプロジェクタが設置され、またほとんどの教室にはインタラクティブホワイトボードが整備されていた。ある学校では、ホワイトボードさえ撤去されており、教師はスクリーンに表示させるコンテンツをもたずに授業することはできない状態である。ただし、英国では伝統的に日本の黒板よりかなり小さい提示エリアしか使っていないという背景もあり、インタラクティブホワイトボードを単にホワイトボードとしてしか使っていないケースもある。

学校にコンピュータ教室をもつのは当然であるが、教科ごとにコンピュータ教室を持つ事例も見られた。教科の特性に応じた機器で構成されており、教科に対するICT機器の親和性が高いこと、さらに教育効果も高まることが志向されていた。1000人規模の生徒数の学校に300台程度の生徒用PC、教師一人に対して1台のPCが整備されているのが一般的である。今後は、ディジタルカメラやディジタルビデオカメラを整備し、マルチメディア教材の活用をしたいという意見があった。

そうした動きに呼応するように、学校訪問とは別に参加する機会を得たBETTでは、PC接続の顕微鏡や天体望遠鏡、制御の学習のためのセンサーやロボットといった、学習のための周辺機器の展示が見られた。

ソフトウェア的には、Schools  Information  Management  System=校務処理システム(学籍管理、時間割の編成、成績処理、文書管理、予算管理等)をベースに、デジタル教材パッケージや、ナショナルテストやGCSE対策のe-Learning教材を組み合わせて活用しており、児童・生徒の出席状況や成績情報を全教員が共有し、指導の共通性、連続性、発展性を高めている。さらに保護者も学校の授業計画や生徒の成績情報をインターネット経由で閲覧可能になっていることが多い。こうしたシステム導入の背景には、学校に配分されるeLCs (electronic  Learning  Credits) の存在がある。

eLCsとは、国家から教育委員会を経由して各学校に配分されるCurriculum  Online用の資金である。各学校1000ポンドに加え、児童・生徒一人当たり9.7ポンドが加算され支給される。(2004年度実績)

eLCsとは、国家から教育委員会を経由して各学校に配分されるCurriculum  Online用の資金である。各学校1000ポンドに加え、児童・生徒一人当たり9.7ポンドが加算され支給される。(2004年度実績)

  • 万人のための統合オンライン情報サービス An integrated online information service for all citizens
  • 子どもと学習者向け統合オンライン個別支援 Integrated online personal support for children and learners
  • 個別化された学習活動への協同的なアプローチ A collaborative approach to personalized learning activities
  • 実践者のための質の高い訓練およびサポートパッケージ A good quality ICT training and support package for practitioners
  • ICTに関わる組織力のためのリーダーシップおよび研修パッケージ A leadership and development package for organizational capability in ICT
  • 変革と改革を支援する共通のデジタルインフラ A common digital infrastructure to support transformation and reform

が示されている。

4.2.2.2  ICTサポート体制とICT活用支援のための人材

今回訪問した教育委員会では、学校のICT活用を支援するスタッフの責任者はe-Strategy Managerと呼ばれていた。そして,彼らによるサービスを受けるためには、学校は経費を支出しなければならない。彼らは、さまざまな教具を管理し、必要に応じて各学校に出向いて教諭にその利用方法を示したり、教諭とともに授業をしたりすることもある。教師のICT活用に関する自己評価を管理し、そのスコアに応じた研修プログラムを提示するなどしている。また、教育スタッフと技術スタッフが教育委員会レベルでも学校レベルでも分かれていて、役割分担が明確になっている

別の学校では、訪問の際に、校長、ICT責任教師とともに事務責任者に対応していただいたが、RM(イギリスの教育機関に対する、ソフトウェアおよびインフラストラクチャのサービスプロバイダー)と契約をして、ICTの活用の向上を学校全体で取り組んでいる様子がうかがえた。

4.2.2.3  教員のICT活用指導力育成

学校におけるICT機器を活用した指導力の向上に対する工夫としては、シニアリーダーシップグループ内にその担当者を位置づけ、学校経営上の課題として、システマティックに対応している(学校CIOに準ずる)。さらに、多くの中等学校では、各教科に1名の核になる教師を中心に教材が作成され、定期的な教科会議を経て、校内のよりよい実践を共有するというシステムが確立されている。またICT活用の円滑な導入,教師の動機付けのために,国定カリキュラム準拠の商業ベースのコンテンツを整備して、比較的短期間に教科のメンバー全員のスキルの向上が確認されたという。

別の学校では、訪問の際に、校長、ICT責任教師とともに事務責任者に対応していただいたが、RM(イギリスの教育機関に対する、ソフトウェアおよびインフラストラクチャのサービスプロバイダー)と契約をして、ICTの活用の向上を学校全体で取り組んでいる様子がうかがえた。

ICT活用と学力向上の関係について、科学の成績の飛躍的な向上が確認されている。また多くの教科で動機付けとしての効果、特に学習困難な児童・生徒のICTを活用した個別学習の効果が確かめられている。BETTのセミナーの一つBectaによる“Evidence of ICT impact and progress”では、学校におけるICT活用について,4つの観点((1)能力開発<向上>,(2)目的整合性,(3)効果,(4)費用対効果)を設けて,その効果を量的・質的に評価している。例えば(3)であれば,コンピュータの台数と生徒の割合,学習プラットホームの活用率,IWBの導入及び活用率を指標に据える。それにより,1)いくつかの領域で劇的に活用が増していること,2)児童・生徒の学習のレベルや効率を高めていること,3)そうしたインパクトは複合的な要因によるものであること,4)教師の負担減は教師の指導や時間の使い方の質的な変化をもたらしていること,が明らかにされた。

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