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  4. 将来像への反映の観点

4.2.3  将来像への反映の観点

4.2  .3.1  学校教育の形態の変化への対応

近い将来においても、現在の日本で行われているいわゆる一斉授業の形態は保持されると考えられる。今回の、英国で訪問した多くの学校で行われていたような、一つの教室の中でグループ毎に異なる授業が日本で実践されることは想定しにくい。ただし、英国の生徒に対する個別のポートフォリオ評価が定着している部分については、授業の形態とは異なり、日本においても徐々に広めていく必要があるのではないかと考える。

そうした個に対応した評価体系が確立される過程においては、教師同士での評価の共有や保護者に対する開示といった場面で、ICT利用が必須のものとなると思われる。また、教育内容の質の検証のために、授業内容の開示、すなわち指導案や教材、評価の規準や基準の開示などが求められる。

4.2  .3.2  どの部分が日本に取り入れられるか

  1. 明確な目標と豊富な予算

    まず、英国と日本における相違点は、制度やリソース的な面では

    • Bectaのような、行政と研究の間を取り持つ機関の存在と影響力の強さ
    • NationalStrategyやCurriculumOnlineの整備

    といった点があげられる。なお、CurriculumOnlineとは、学校が無料、あるいはeLCsを使って利用可能なマルチメディア教材のデータベースである。

    一方、各学校においては、明確な教育効果の実証を待たずに環境が整備され、その結果、教育でどのように活用するかに主眼に置かれ、結果として教育効果の向上を示すデータを得ているように、「教師の努力よりもまず環境整備」という姿勢が感じられたことも、日本との大きな違いではないか。すなわち、個々の教師の力量の向上を必須の前提としておらず、学校全体としてのICT活用能力の向上が指向され、その後、個々の教師に波及することを狙っている点に注目すべきである

    Bectaは、

    • Leadership and Management(リーダーシップと管理)
    • Curriculum(カリキュラム)
    • Learning & Teaching(学習と教育)
    • Assessment(評価)
    • Professional Development(専門的な開発)
    • Extending Opportunities for Learning(学習機会の拡大)
    • Resources(教材)
    • Impact on Pupil Outcomes(児童・生徒の成果への影響)

    の8領域において、その学校の到達度、到達目標を示し、基準を満たした、優れたICT活用を行っている学校にICTMarkを与えている。

    日本においても、影響力のある機関によるこのようなシステムの構築が必要である。

  2. (2) 学校の外部からのICT活用支援人材のあり方

    英国では、一つのグループが複数の学校を担当する形式と、校内のスタッフとして位置づける形式の両方が見られた。業務の内容としては、導入時のハードウェアやソフトウェアの選定のアドバイスから日常の管理運営、教師に対する研修の企画から実際の研修、場合によっては授業に入り込んで教師をサポートするところまでを一手に引き受けているが、教師が授業に専念できる環境を提供しているのは共通している。

    日本では、市町村単位で人材を確保し、地域の拠点のセンターを運営する形式が一部で始まっているので、これを発展・普及させて活用する方策が妥当であると思われる。こうした人材は、予算獲得の交渉といった行政的な能力とともに、教育を熟知した人材であることが必要であり、現状では指導主事が最も近い存在である。

  3. ICT活用支援に対する校内分掌のあり方

    校内分掌としては、学校としての教育の情報化の企画・立案や管理・運用、教師に対する研修の企画・実施などを受け持つ。こうした業務は、現在では一部の教師の仕事に追加されて行われていることが多いが、高度な専門性を持たせ、通常の学校業務とは切り離した職員を配置し、上記(2)の学外人材と連携を取ると共に、機器のメンテナンスから情報の公開、障害への対応などに責任と権限を持たせる立場が考えられる。現在このような職種または分掌は学校現場では確立されていない。

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