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5.1.1  現状

5.1.1.1  普通教室

普通教室へのコンピュータ設置は、第2章で指摘したように、今回の調査においても進んでいないことが明らかになった。プロジェクタ、実物投影機等の設置も、平均すると学校に1台以下であり、整備が進んでいない。電子情報ボードに至っては、ほとんどの学校で1台も導入されていない。

一方、先進校においては、すべての教室にプロジェクタ、ノートパソコン、実物投影機が配備されている場合が多く、少なくとも学校に数台が用意されていた。プロジェクタは、機器一式が収納可能なワゴンに乗せられているケースが多く、吊り下げ式のものはまだ少ない。プロジェクタの投影は、黒板上のマグネットスクリーン、天井から吊り下げられているスクリーン等に行われており、黒板との併用が前提となっている。中には、黒板の代わりにホワイトボードを設置し、吊り下げ式のプロジェクタとスライド式の電子情報ボードを全教室に設置している学校もあった。この学校では、教卓にDVDプレーヤ、アンプ、照明のスイッチなどが組み込まれ、教員がスイッチ一つで各種メディアを活用できる環境を整えている。機器の台数が少ない先進校においては、空き教室等にプロジェクタや大型プラズマディスプレイ、電子情報ボードなどを設置し、教員用タブレットPCの活用を組み合わせてICT教室をつくり、特定の教科等で活用するといった工夫がなされていた。

よく活用されている周辺機器にはデジタルカメラがあるが、これも様々な学習活動において活用するには十分な台数が整備されていない。

無線LANとそれに対応した学習用ノートパソコンも導入されているケースがある。それらは、教室に常時設置されている場合と、まとめて管理し、必要に応じて教室に運んで活用する場合があった。ある学校では、貸し出し可能な携帯型PC(ウルトラモバイルPC)を100台以上導入し、教室でも自宅からでも教材にアクセスできるようにしていた。

5.1.1.2  コンピュータ教室、特別教室等

児童生徒が一人1台のコンピュータを同時に活用できる42台のコンピュータが配置されたコンピュータ教室について、整備済みと回答した教育委員会は約半数である。特別教室へのコンピュータ設置は、導入されていないという回答が少数であることから、ある程度整備されているようであるが、活用頻度は低くなっている。グループでの学習や少人数指導等の多様な学習形態に対応できる学習スペースである「新世代型学習空間」については、実態を把握していないが、未整備の学校がほとんどである。この他、学校図書館への図書管理システムの導入や地域図書館とのネットワーク化、情報検索等のためのコンピュータ設置による学習情報センター化、コンピュータ教室との融合によるメディアセンター化についても、極めて少数の学校で進められているのみであり、普通教室以外のコンピュータ整備も進んでいない状況が浮き彫りになった。

先進校調査においても、特筆すべき環境整備がされているケースは少ないが、高等学校では、第二、第三のコンピュータ教室が整備されている場合もあった。ある小学校では、コンピュータ教室にタブレットPCを設置し、必要に応じて取り外して活用できるようにしていた。また、第二、第三のコンピュータ教室は、ロボットの制御や簡単なプログラミングが可能な機器の整備が行われていた。

5.1.1.3  校内LAN

e-Japan戦略の目標であった校内LANの整備、中でも普通教室のLAN整備率は、2005年度末において50.6%に留まっている(平成17年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査、文部科学省)。今回の調査においても小中学校で52.1%、高等学校で82.0%となっている。

先進校においては、校内LANは整備済みであり、児童生徒用ネットワークと教員用ネットワークを分離し、セキュリティが確保されていた。また、無線LANの整備も行われており、普通教室において児童生徒が一人1台のコンピュータを活用し、1学級の人数分のコンピュータから同時にアクセスできるようになっている。

インターネットへの接続は、教育委員会単位で整備されているケースが多く、校内LANやサーバと併せて一括管理されている場合もある。

5.1.1.4  教員一人に一台のコンピュータと校務の情報化

学校の情報化は、校務の情報化から進められているケースも多い。教員一人1台のコンピュータ、校務処理用システムの導入を教育委員会単位で行い、地域内のどの学校でも共通に校務の情報化が進められている。

韓国では、全国共通の校務情報処理システムNEISを整備し、都道府県単位で管理、運用を行っていた。また、英国では、学校情報マネジメントシステム(Schools Information Management System)で学籍管理、時間割の編成、成績処理、文書管理、予算管理等を行うと同時に、児童生徒の評価情報を基にe-Learningによる個別学習を行っていた。いずれの場合も、保護者向けにインターネット経由で学校の授業計画や児童生徒の成績情報を開示していた。

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