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5.1.2  課題

5.1.2.1  整備の遅れへの対応

韓国、英国と比較するまでもなく、日本の教室のICT環境整備の遅れは明らかである。例えば、韓国では、2001年に児童生徒5.6人に1台のコンピュータ、教員一人1台のコンピュータ整備を終えている。その後5年間かけてICT活用の普及を進めた結果、現在の日常的なICT活用が定着しているのである。日本でも2001年にすべての教室にプロジェクタを吊り下げ、コンピュータを設置し、校内LANを整備した地域があるが、これらの活用が定着するまでには数年かかっている。日本全国、どの地域の学校においても日常的にICTを活用するためには、地域間格差、学校間格差を解消し、すべての教室のICT環境整備を行うことが急務である。調査結果から明らかなように、都道府県、政令指定都市に比べ、市町村教育委員会の対応の遅れが目立っている。担当者がおらず、整備計画が作られていない地域においてICT環境の整備をどのように進めていくのかは最も大きな課題であると言える。

5.1.2.2  教員の負担軽減

設備がある程度整っていても、ICTを活用するためにプロジェクタやスクリーンを移動して設置し、コンピュータや実物投影機と配線し、電源を確保するといった作業を教員が強いられている場合が多い。また、サーバやネットワークの管理など、専門的な知識が必要な業務を教員が行っているケースも少なくない。韓国や英国の教室では、大型ディスプレイやプロジェクタが各教室に固定され、必要な機器が配線済みで教員が負担なく活用できる環境が整えられていた。また、機器やネットワークの管理は、教育委員会か学校が雇用した技術者が行っていた。日常的な活用を普及するためには、教員に負担のかからないICT環境をどの教室にも整備し、適切に維持管理することが課題となろう。

教室のICT環境を共通にせず、学年や教科に応じて構築するという方法もある。例えば、英国の中等教育学校では、教科教室制が採用されており、教科の特性に応じて、担当教員が活用しやすい教室環境が整備されている。

5.1.2.3  施設、設備の課題

日本の教室は、7m×9mという規格に則っており、前面には大きな黒板が設置されており、机の配置もそれを前提に行われている。大型ディスプレイやスクリーンの大きさや教室における設置については、黒板との併用、教室の明るさ、児童生徒の見やすさなど、様々な視点から検討する必要がある。

普通教室で児童生徒が一人1台のコンピュータ等を活用する場合には、電源の確保やネットワークへの接続も大きな問題となる。例えば、ノートパソコン等を1クラス分収納し、充電できる保管庫を導入し、バッテリー駆動で活用すること、高速な無線LANを整備し、1クラス分のコンピュータから手間なく、しかもセキュリティを確保しながら接続できるようにすること、などが求められるだろう。

地上波デジタル放送に対応した校内放送設備や、防犯用IPカメラの設置、IP電話、テレビ電話の活用等、校内LANをベースにしたシステムの導入も今後検討すべき課題である。

校舎の建て替えや新築の際には、技術動向を踏まえたICT機器の選定と、教室の大きさ、黒板とスクリーン等の配置、机の大きさ、電源の容量、教卓へのICT機器の収納等について検討し、新しい教室環境を構想することが望まれる。

5.1.2.4  授業改善のためのICT環境

まず、最も多い授業形態である一斉指導の改善につながるICT環境整備を考えるべきである。すなわち、普通教室における一斉提示用のシステムを導入することである。先進校や諸外国の調査から、大型ディスプレイやプロジェクタの選択、電子情報ボードの機能の必要性等が、検討課題となる。

グループでの学習や少人数指導等の多様な学習形態におけるICT活用についても検討する必要がある。従来型のコンピュータ教室だけではなく、新世代型学習空間やメディアセンターを設置したり、普通教室等でもノートパソコンや携帯端末等を児童生徒が一人1台で活用できる環境を整備することが必要となる。

韓国、英国、米国では、e-Learningによる個別学習を学校教育に導入し、家庭での学習と接続する試みが既に始まっている。日本の先進校では、個別学習用プリント教材データベースを個別学習に活用した事例があるが、これはe-Learningの前段階と言えるだろう。今後は校務の情報化と併せて、児童生徒の評価情報の蓄積・分析とe-Learningシステムの導入・活用についても検討する必要があるだろう。

 

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