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5.4.2 2010年までに急ぎ取り組まなければならないこと
2010年までに,すべての教員に,ICT活用の特長やイメージを理解してもらい,それに着手してもらう必要がある。そのためには,主として,普通教室における授業のいかなる場面でどのようにしてICTを活用するのが望ましいのかを,以下のような方策によって普及すべきである。
(1)学習指導要領等におけるICT活用の明示
わが国の初等中等教育の教育課程は,他の先進諸国のものに比べて,国による基準が明確に定められている。それゆえ,授業におけるICTの活用については,学習指導要領において明確に位置づけられることによって,教員には,それを積極的に推進しようとする動機が高まる。ICT環境の整備を行政に要請する際の根拠にもなり得る。
既に現行の学習指導要領においても,例えば小学校の総則の「指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」に,「各教科等の指導に当たっては,児童がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ,適切に活用する学習活動を充実するとともに,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。」という記述がある。また,各教科等においても同様の記述が見られる。しかしながら,第2章で確認したICT活用の実態からすれば,なおいっそう具体的な記述が求められる。実際に,アンケート調査において,「(普通教室において)授業のどのような場面においてICTを活用すればよいかが分からない」と回答した教員は,小中学校で50.2%,高等学校で56.7%である。
体験学習とICT活用の組み合わせ効果についても留意する必要がある。一般に,ICT活用については,それによって子どもたちの直接体験がないがしろにされるという危惧の念を抱く傾向があるが、わが国におけるICT活用の実践を見ると,体験学習のまとめや振り返りに,またそれを他の子供と共有するための手段として、ICT活用が役立つことは十分に証明されている。そうした留意点を明示することで,体験学習とICT活用の相乗効果が期待できる。
(2)教科書準拠型デジタルコンテンツの活用
わが国の教員は,教科書の利用を中心に授業を展開している。したがって,教科書の活用と連動するICT活用が最も自然である。換言すれば,教科書準拠型デジタルコンテンツの充実により、教員がICT活用のイメージをふくらませ,それに着手しやすくなる。
第4章で述べたように,各教科におけるICTの活用を上手に普及させている英国の学校はいずれも,ICT環境の整備に併せてナショナルカリキュラムに即したコンテンツを購入し,教員に提供していた。教科書準拠型デジタルコンテンツの提供が進むことにより,授業におけるICT活用の普及につながるであろう。
なお,こうしたアプローチをわが国の学校において着実に実行するには,コンピュータやプロジェクタの設置等も含めてであるが,学校予算に占めるICT関係経費の割合を調査し,ガイドラインを定めることが望ましい。
ただしコンテンツ等の開発の主体や手順については,英国のように民間事業者が主体の場合もあれば,韓国のように国や教育委員会等が主体となる場合もあるので,わが国に適した方法を選択できるよう,さらに検討を重ねるべきであろう。
(3)新しい教育方法の導入に向けた研修の充実
これまで述べてきたような,ICT活用を前提とする教育方法の多くは,わが国の教員にとっては,新しいものである。そのため,ICTの活用に合った教育方法を教員が積極的に吸収し,またそれを実践できるように,研修を工夫する必要がある。コンピュータ等の操作技術を獲得するだけの研修は,ICT活用と教育方法の刷新を接続するためのアイデアを得られない。すぐれた実践事例の報告を聞くだけの研修では,新しい教育方法への挑戦意欲は得られないだろう。したがって参加型,ワークショップ型の研修スタイルが重要であり,実際に自校の,あるいは自分のICT活用による授業改善プランの策定といった,実際的で,効果的な研修が求められる。