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4.3.2  教育CIOとは

教育CIOは、今回調査したすべての学区において、学区の副教育長と位置づけられている。ほとんどの学区では教育長1名、副教育長3名ほどで構成されている。企業のCIOと同じく、学区の「最高情報統括責任者」である。CIOの下で約400~500人のスタッフが仕事を行っている。
CIOの主な役割と責任範囲は、大きく分けて、下記の6点である。

  1. 情報公開・説明責任(ビジョン策定、監査、法 遵守、組織連携)
  2. 技術革新支援(計画・財務・現場サポート)
  3. 情報共有(電子化カリキュラム・教材、形成的 評価、到達度評価)
  4. 生徒支援(安全・安心、個別学習プログラム、 学力保障)
  5. コミュニケーション支援(ネットワーク基盤の 保守・運用、教育テレビ番組制作、ビデオ会議 管理、VOD管理)
  6. 教員、スタッフ研修(スタッフ、リーダを対象) 教育CIOは、これらの実施、運営に関するすべての権限と責任を有し、人、金、物を動かす非常に責任の重い立場である。

教育CIOの選任は、教育長の指名で行われる場合が多い。教員から教育CIOになる人は少なく、今回お会いした4名の方のうち、教員経験者は1名。残りのすべての方は、企業のCIOからの引き抜きである。給与は通常の校長職の約1.5  倍程度で、企業CIOに比べると少ないが、教育行政関係では非常に高い給与が保障されている。

教育CIOの下には、先ほどの役割毎に、サブチーフ、ディレクターと呼ばれる主任スタッフが配置され、ツリー上の組織として動いている。スタッフ間のコミュニケーションが重要であるため、毎週数時間をかけて、チーフのミーティングが行われている。

現在、全米の学校区は約1万1千あるが、そのうち教育CIOが配置されている学区は約50学区である。その数は増加傾向にはあるが、すべての学区において配置されるとは思えない。
教育CIOの設置の意味として非常に重要な事は、教育効果の向上と効率化によるコスト削減にある。特にコスト削減の面でみると、どの学区もこの数年間の間に、業務の効率向上などの成果として人員の削減を実施している。MDの学区では、当初500人以上いたスタッフが現在では400名程度まで削減されている。

各学区ともに、学校改善計画が作られ、それを元に様々なプロジェクトが実施されている。学区全体の情報化の推進計画、学校の機器の更新計画、活用のための様々なシステムの構築、教員への研修などをトータルなものとして計画・実施されている。

学区の教育予算の約75%は、地域の税収入によってまかなわれている。州政府や国からの補助の割合は低い。良い教育を実施する目的として、良い生徒を育てることにより、良い職に就き、地域の活性化につなげ、良い地域を作っていくことになるという意識がある。地域全体をよくする事によって、地域の税収を上げ、教育に対しても理解と協力を得られることができるということである。そのためにも、成果を親や地域に対して説明をしていく、説明責任が問われることになる。児童・生徒の学習の様々な状況を克明に記録し、蓄積するためのデータベースシステム(学習情報支援システム)が広く活用され、すでに5年以上のデータが蓄積されており、説明資料としてだけでなく、様々な指導資料、評価資料として活用されている。

評価テストを専門に作成するスタッフもいる。学区内のすべての学校の統一テストが実施されており、マークカードを利用したテストや、一部コンピュータテストも実施され始めている。
教育委員会の情報発信も積極的に行われている。各委員会のWebページは、どこもその地域に在住する英語を母国語としない人たちに向けて、多国語のページで提供されている。MDの学区ではこのページを作るスタッフは十数名で担当しており、そのチーフは日本人が担当していた。(残念ながら日本人の在住者は小数のため、日本語のページは存在しない。)

 

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