1. ホーム >
  2. 海外実地調査結果 >
  3. 米国 >
  4. 将来像への反映の観点

4.3.6  将来像への反映の観点

今、日本の教育において、どの部分がうまくいっていないのかをまず、明確にすべきであろう。情報化による支援は様々な面で必要になることは間違いないし、状況に応じた様々なレベルの支援のあり方が考えられる。

教育CIOの導入については、国主導ですべての都道府県教委レベルにといった方法ではなく、各都道府県、政令指定都市が主体となって、必要と判断した地域で導入すべきであると考える。都道府県教委は、下部に市町村教育委員会を有し、特に、小・中学校の設置、施設の管理運営、教員の服務管理に関しては責任を持っている。人事権、予算権などについては非常に複雑な仕組みを有するため、現状のままの教育委員会制度では、中途半端にしか関われない可能性がある。教育委員会制度についても議論が行われているが、そこに教育CIOに関しても含め、より迅速で的確な舵取りができるように制度改革を行う必要がある。これを考えると、現時点で実際に動けるのは、政令指定都市もしくは中核市に限られるのではないかと思われる。また、そこでも予算に関しては独自決定権が無い場合が多い。教育に関してほとんど知識の無い財務部局の担当者が、パソコン1台の値段の決定にまで口出しを行う今の制度を、この機会にきちんと見直す必要があると思われる。

家庭や地域との連携にICTを利用する試みは参考になる。日本でも学校Webページを持つ学校も多いが、家庭や地域との連携、説明責任といった意識で構築されている事例はまだ少ない。防犯、安全を目的とした保護者への携帯メールサービスなどを行う地域も増えてきており、それら既存のシステムを有効に活用することで、保護者向けに学校での様々な出来事をタイムリーに伝えることができるようになると考える。まずは、それを行う教師に、負担感をできるだけ感じさせない形で導入していく必要がある。

情報化を進めていく上で、環境整備は必須条件である。校務の情報化システムをうまく機能させることで、必ずパソコンを利用しなければならない状況を作り出すことができる。教室へのIWBや天吊、教卓内蔵型のプロジェクタを設置して、授業前に配線等をしなければならない煩わしさを排除し、誰もが使いたいと思ったときにすぐに使える教室環境を整備しておくことは重要である。起動や終了に時間がかかり、窓や部屋の明かりにも配慮が必要なプロジェクタよりも、今後はより容易に活用できる大型のテレビの利用が求められる。

学校内どこでも無線LANが活用できるように整備を行うことも重要であろう。今後はWiMaxなどの技術も注目されており、学校を拠点とした校区全体の情報化に広げることも考慮すべきであろう。同時にセキュリティ面での配慮も重要である。実際問題として、教員が家庭に仕事を持ち帰ることは、今後も無くならないと思われる。その際に、安全に校内のサーバを利用するためのVPN接続サービスの導入も急がれる。これらのサービスについて、現在は外部に部分的に委託するケースが多いが、県域の生涯学習ネットワークとして、安全、安心なネットワークを安価に提供することも、今後検討すべき内容になると思われる。

地域独自のコンテンツの制作、蓄積も重要な課題となる。教師が必要と感じるコンテンツを、地域レベルで作成したり、必要な資料、情報をオーダーすると、きちんと用意して教師がすぐに使えるようにしてくれるサービスも検討したい。

ページの先頭に戻る